![](https://www.fujimfg.co.jp/wp/wp-content/uploads/2024/12/Frame-71182972.jpg)
福井県を拠点とするオカモト鐵工(てっこう)様は、創業70年以上の歴史を持ち、建築鉄骨から鋼製橋梁などの鋼構造物を設計から製作、施工まで一貫して手掛ける、鉄工のスペシャリストです。同社は、国土交通大臣認定鉄骨製作工場:Hグレードとして、大規模な建物の鉄骨製作が可能な北陸地方でも有数の企業です。福井県立恐竜博物館や今年延伸したばかりの北陸新幹線芦原温泉駅駅舎など、数々の印象的な建築物にも関わっていますが、ビルなどの建築物だけでなく、アリーナの張り出し屋根や複雑な形状の建築物にも積極的に挑戦してきました。
![](https://www.fujimfg.co.jp/wp/wp-content/uploads/2024/12/Frame-71182973.jpg)
- 社名
- オカモト鐵工株式会社
- 本社
- 福井県福井市上森田1丁目102-2
- 事業概要
-
- 橋梁製作
- 使用用途
-
- 素地調整
- ケレン
佐藤本部長は「難易度の高い特殊形状の鉄骨製作技術は、他社にはない独自の強みです」と仰います。創業者から今も脈々と受け継がれる“難度のある仕事にあえてチャレンジする”という精神が同社の挑戦の歴史を築いており、福井県内にとどまらず中部地方でも多くの実績を誇ります。同社のモットーは「良い製品を安く、工期通りに、安全に」。これを実現するために、近年ではBIM(Building Information Modeling)を活用した承認図の作成や、タブレット端末を用いた現場管理など、デジタル化を積極的に推進しています。
また、人材育成にも力を入れており、女性が働きやすい環境づくりや社員がやりがいを持てる評価制度を整備しています。一人ひとりの創意工夫とチャレンジ精神が、付加価値の高い提案力・技術力に繋がっています。こうした業務効率化や人材育成などの取り組みにより、高品質な製品を提供し続けています。
今回取材にご協力いただいた
担当者様
-
執行役員 本部長
佐藤様
導入のきっかけは環境改善、クリーンな大型ブラストルーム
同社ではデジタルツールの導入以外にも作業効率化のための設備投資を積極的に行っており、ロボット溶接や大型換気設備などの導入を実施しております。そんな中、次に白羽の矢が立ったのはブラスト設備でした。以前より鋼製橋梁の塗装前の素地調整にエアーブラストを使用していましたが、従来の設備には2つの課題がありました。
1つ目は、ブラスト作業場の密閉性の低さによる近隣環境への悪影響です。以前は屋外の塗装小屋で珪砂を使用したブラスト処理を行っていましたが、ブラスト研磨材がカーテンの隙間から漏れ、周囲に飛散することが問題視されていました。
2つ目は、研磨材回収作業の課題です。毎回トン単位で使用する珪砂は、一度使用したらスコップでかき集めて産業廃棄物として処理するため、非効率かつ非常に重労働な作業が発生していました。
こうした問題を解決するため、同社は不二製作所の「ニューマ・ブラスターLF」を導入。この装置の最大の特徴は、噴射された研磨材を風力で自動回収して再噴射できる自動回収・分級機能です。ニューマ・ブラスターLFは、従来のブラスト作業のイメージを一新するクリーンなブラストルームとして、近隣環境や工場内の環境への配慮と大型製品の効率的なブラスト処理の両立を叶えました。風力分級により粉塵を分離することで、再噴射される研磨材の粒度が整うため、加工面の安定が保たれ、作業時の視界も良好です。
さらに、風力で自動回収することで、「コンベアやバケットエレベータなどの大きな付帯設備が不要となり、メンテナンスの手間も大幅に軽減できることも、導入の決め手となった」と佐藤本部長は語ります。
![](https://www.fujimfg.co.jp/wp/wp-content/uploads/2024/12/Frame-10715-3.jpg)
![](https://www.fujimfg.co.jp/wp/wp-content/uploads/2024/12/Frame-10718-3.jpg)
風力自動回収で重防食塗装前のブラスト作業時間と
産廃の大幅削減を実現
同社は従来、6つの箱桁をブラスト処理して塗装するまでに約12日を要していました。しかし、ニューマ・ブラスターLFを導入したことで、同じ作業を約9日で完了でき、生産効率が飛躍的に向上しました。
従来は塗装小屋でブラスト処理から塗装までを行っていたため、珪砂が溜まり続け、その都度清掃作業が必要でした。このため、ブラスト処理と塗装以外の作業が発生し、規定時間内(※下記画像参考)に仕上げられる数量に制限がありました。
しかし、ニューマ・ブラスターLFに備わる研磨材の風力自動回収により、清掃の手間がなくなった結果、ブラスト加工から塗装(ジンク)までの工程において、1日の生産量が増加しました。
さらに、研磨材の再利用(風力で自動循環し再噴射)が可能になったことで、廃棄物の量が従来の1/20にまで減少し、産業廃棄物処理のコストと工数が大幅に削減されました。
作業効率化と環境改善を同時に実現した革新的な装置ニューマ・ブラスターLFを、同社は高く評価しています。
![](https://www.fujimfg.co.jp/wp/wp-content/uploads/2024/12/Frame-1071225-1.jpg)
![](https://www.fujimfg.co.jp/wp/wp-content/uploads/2024/12/Frame-1022718.jpg)
![](https://www.fujimfg.co.jp/wp/wp-content/uploads/2024/12/Frame-71182975-1-1024x301.png)
※鋼製橋梁の箱桁やスプライスなどに必要な素地調整(ケレン処理)では、ブラスト処理後は規定時間内(本件では4時間以内)に、無機ジンクリッチペイントなどを用いた防錆塗装を行う必要があります。また、ミストコートは、無機系ジンクリッチペイントの上に有機塗料を塗装する際、塗膜内の空隙(ボイド)の発泡を防ぐために必要な工程です。その後の塗装工程(下塗り・中塗り・上塗り)はそれぞれ1~10日以内に行います。
環境保護と効率化を目指し、今後も難題に挑戦し成長し続ける
鉄工業界では、品質・安全管理の厳格化に伴い製品検査に重点が置かれ、各工程間の流れに遅れが生じることがあります。同社はこうした生産課題に対し、自動化やデジタル化、設備投資で生産効率を加速させています。
また、難度の高い案件に挑戦し続ける同社では一品一様の製品も多く、職人技が必要不可欠なため、社員が働きやすい環境づくりを推進しています。その作業環境改善の一環として、今回ニューマ・ブラスターLFを導入いただきました。
一見すると、ブラストは私たちの日常生活とは無縁のように思われるかもしれませんが、実際には人々の生活や安全を支えるインフラである橋梁の製作では欠かせない工程です。同社が手掛ける橋梁には、不二製作所のニューマ・ブラスターLFが深く関わり、人々の生活にも貢献していくことでしょう。“オカモト鐵工”という名前を全国各地に拡げていくことを、私たちはブラスト技術を通じて支えてまいります。
![](https://www.fujimfg.co.jp/wp/wp-content/uploads/2024/12/Frame-107181212.jpg)
![](https://www.fujimfg.co.jp/wp/wp-content/uploads/2024/12/Frame-10716-3.jpg)
![](https://www.fujimfg.co.jp/wp/wp-content/uploads/2024/12/Frame-107333315.jpg)
※掲載情報は取材当時(2024年10月)のものです。
ケレンとは?素地調整、除錆度の規格について
ケレンとは、塗装やコーティングを行う前の下地処理を指し、鋼材や鉄材の表面に付着した錆(さび)や汚れ、古い塗膜などの付着物を除去する作業です。ケレンは、塗装やコーティングの品質を大きく左右する重要な工程で、塗料がしっかりと密着し、塗膜の耐久性を高め、防錆効果を持続させるために必要不可欠です。この作業にはブラスト、ディスクサンダー、ワイヤーブラシ、動力工具、手工具などが用いられます。
ケレンは日本で除錆度を示す際の一般的な呼称であり、素地調整のグレードはJIS、ISO、SIS、SSPCなどの規格によって異なる名称が用いられています。素地調整の程度に応じて複数のグレードに分類されており、ケレンと呼ばれる作業では4段階、世界的な規格では6段階に分けられています。
以下の表は、一種ケレン、Sa、ホワイトメタルなどの代表的な素地調整のグレードを示しています。
各種除錆度規格
鋼材表面の状態 | JIS・ISO・SIS | SSPC |
ケレン (一般呼称) |
除錆率 | |
拡大鏡なしで、表面には、目に見えるミルスケール、さび、塗膜、異物、油、グリース及び泥土がなく、均一な金属色を呈している。 | Sa3 | SP-5 | WHITE METAL BLAST CLEANING |
1種ケレン (ブラスト法) |
99.9%以上 |
拡大鏡なしで、表面には、目に見えるミルスケール、さび、塗膜、異物、油、グリース及び泥土がない。残存するすべての汚れは、そのこん跡がはん(斑)点又はすじ状のわずかな染みだけとなって認められる程度である。 | Sa2½ | SP-10 | NEAR-WHITE BLAST CLEANING |
95%以上 | |
拡大鏡なしで、表面には、ほとんどのミルスケール、さび、塗膜、異物、目に見える油、グリース及び泥土がない。残存する汚れのすべては、固着(2)している。 | Sa2 | SP-6 | COMMERCIAL BLAST CLEANING |
- | 67%以上 |
拡大鏡なしで、表面には、弱く付着(1)したミルスケール、さび、塗膜、異物、目に見える油、グリース及び泥土がない。 | Sa1 | SP-7 | BRUSH-OFF BLAST CLEANING |
- | - |
- ※1 刃の付いていないパテナイフで、はく離させることができる程度の付着。
- ※2 刃の付いていないパテナイフでは、はく離させることができない程度の付着。
※規格
- 日本産業規格: JIS Z0313
- INTERNATIONAL STANDARAD: ISO8501-1
- SVENSK STANDARAD: SIS 05 5900-1967
- Steel Structures Painting Council:Surface Preparation Specification (SSPC)
中でも「一種ケレン」は最も高い素地調整レベルで、除錆率95%以上を達成する工程です。この高度な除錆度の素地調整(一種ケレン)は、エアーブラスト(サンドブラスト)などのブラスト処理のみで実現することが可能なため、「ブラスト法」とも呼ばれています。
一種ケレンによる徹底的な下地処理は、主に長期的な耐久性が求められる大型鋼構造物や建築物に適用され、特に橋梁や道路、水門、輸送機械、建設機械などに実施されます。これらの構造物には、品質を保ち安全性を確保する目的から「重防食用塗装」と呼ばれる耐食性の高い塗装が使用されており、その塗装前の工程としてブラスト処理による一種ケレンが欠かせません。ブラスト処理によって金属表面には微細な凹凸が形成され、塗膜がより深く食い込み、長期間にわたり塗料の密着を強化する「アンカー効果」を発揮します。ケレンの重要性を理解し、適切な方法で施工することで、高品質かつ長寿命な塗装が実現できるのです。