
サンレイ工機株式会社様は、私たちの身近にあるスマートフォンの液晶画面や、電気自動車(EV)のリチウムイオンバッテリーに使用されるセパレーターフィルムなどの高性能フィルム製造に欠かせない、 「軽量」と「高剛性」を両立させたカーボンロール”CARBOLEADER®”を製造しています。

- 社名
- サンレイ工機株式会社
- 本社
- 千葉県白井市名内342-3
- WEBページ
- https://sunray-kouki.com/
- 事業概要
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- ロール製造
- 使用用途
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- めっき前処理
- 表面処理
同社の津覇専務取締役は「近年、極めて高い精度が求められる薄膜のフィルム製造において、効率化や大量生産の需要からロールの長尺化が進んでいます」と語ります。この業界ニーズに応える高精度かつ世界最長クラスの「カーボンクラッドロール」を開発・生産する技術を確立した同社は、世界でも唯一の技術を持つ企業としてフィルム製造の革新を支えています。
カーボンクラッドロールとは、カーボンロールの表面に薄い金属をクラッド(被覆)する同社の独自技術により、多種多様な表面処理を可能にした異材質多層管ロールです。カーボンクラッドロールは鉄ロールやアルミロールと比べてたわみにくく軽量で、高温環境でもめっき剥がれなどが起きず長寿命のため、安定したフィルム製造を支えます。表面に傷や打痕をつけてしまっても、再めっきや再クラッドによる修理が可能です。
同社では、自社での実証試験を繰り返しロールの性能を裏付けるとともに、徹底した管理体制のもと高品質な製品を提供しています。
今回取材にご協力いただいた
担当者様
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専務取締役
津覇 賢吾様
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常務執行役員 生産管理 調達
佐藤様
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製造部
松井様
長尺ロールの安定しためっき品質と
機能性梨地へ導くブラスト処理
表面処理が可能なカーボンクラッドロールは、耐久性や機能性を高めるためにめっき処理が施されます。めっき処理の前工程として、エアーブラスト(サンドブラスト)による下地処理を行うことで、得られる効果が2つあります。
1つ目は、めっきの密着性向上です。ロール表面の汚れや不純物を除去し微細に粗面化することで、付着するめっき被膜の均一化が目指せます。特に同社の強みである長尺ロールの下地にブラスト加工を施し、めっき処理の確実性を高めることは品質維持の重要なカギとなります。
2つ目は梨地面の付与です。ロール表面に意図的に凹凸をつけることで、フィルムに対するグリップ力を向上させます。この処理によりフィルムの安定した搬送が可能なロールを製造することができます。
同社は、長尺ロールへの精密な素地調整が可能なブラスト設備として、コンベア型の「ニューマ・ブラスター」を採用しました。生産管理担当の佐藤常務執行役員より「導入前は粉塵の影響を懸念していましたが、実際には研磨材の漏れが少なく清潔な作業環境を維持できています」と評価をいただき、品質管理につながる5Sを徹底した同社の工場でも安心してご使用いただいております。


汎用性と均一加工を追求したニューマ・ブラスターで
生産性向上に寄与
従来、ブラストなどの前処理を含むめっき工程は外部に委託しており、加工サイズや処理能力の制約から工程待ちが発生する場合がありました。ブラスト処理を内製化することで、めっき工程の期間を従来の約1/3へ大幅に短縮することができました。
生産管理担当の佐藤常務執行役員は「納期のコントロールが格段に容易になりました」とニューマ・ブラスターの導入効果を語ります。
また、同社が製造するカーボンクラッドロールは一品一様の特注品のため、製品の長さや粗さの指定など、顧客からの様々な要求に対応する必要があります。ニューマ・ブラスターは製品に応じた専用設計が可能なため、同社の最長ロールサイズに合わせて10mまでのロールが搬送できるコンベア型を基本に、ロールの回転機構と研磨材を安定噴射するガンを複数本つけることで自動かつ均一な加工を実現しました。
ブラスト作業を担当する製造部の松井様より「ニューマ・ブラスターはシンプルな操作性でありながら精密な制御ができるので、お客様の要求する表面粗さを誰でも正確に再現できます」と高い評価をいただいております。少数精鋭スタッフが多能工化を推進して製造を行う同社において、生産体制の安定化に貢献しています。
コンベア型ニューマ・ブラスター
ロール加工中の様子
ニューマ・ブラスターは、長時間の加工や量産品の加工の場合でも、サイクロン分級により噴射される研磨材の粒度を一定に保ち、その研磨材を安定的に噴射するため製品をムラなく均一に加工することが可能です。


未来に残り続ける確かな技術力
同社独自のカーボンクラッド技術は、国立科学博物館の未来技術遺産にも登録され、その革新性は高く評価されています。世界をリードする高性能カーボンロールメーカーとして産業の発展に貢献し続ける同社の優れた技術力はロール製造にとどまらず、奇跡の一本松保存プロジェクトやレーシングカーのプロペラシャフトなど幅広い分野で活かされています。
そんな未来産業に貢献する同社において、ニューマ・ブラスターは生産効率、品質、顧客対応力を飛躍的に向上させる重要な設備として活躍しています。「ブラストによる表面処理で得られるロール性能を顧客に展開していきたい」と津覇専務取締役は語っており、今後もニューマ・ブラスターの活躍の幅が広がることが期待されます。




※掲載情報は取材当時(2025年1月)のものです。
光学フィルム用精密ロールにおけるエアーブラスト処理の多様な効果
光学フィルム用の精密ロールにおいて、エアーブラスト(サンドブラスト)による表面処理は、多岐にわたる重要な役割を果たしています。その代表的な用途として、まずめっき工程の前処理が挙げられます。エアーブラストにより金属表面を均一に粗面化することで、めっきの密着性向上と均一な析出が促進され、「はがれ」「ふくれ」などの密着不良や、「ピット」「ピンホール」といった表面欠陥の発生を抑制します。
ブラスト技術のリーディングカンパニーである不二製作所の高精度なブラスト加工は、このようなめっき工程の品質を支えるだけでなく、さらに高度な用途にも活用されています。例えば、転写ロールへ微細なブラスト加工を行うことで、ディスプレイの視認性向上に不可欠な防眩フィルムや低反射フィルムなどの機能性を付与する技術として採用されています。
不二製作所が高精度なブラスト加工で選ばれる理由は、独自開発の研磨材定量噴射ユニット(各国で特許取得済み)を搭載した「ナノ・ブラスター®」の性能と、長年培った技術ノウハウにあります。この確かな技術を活かし、経験豊富な専門チームによる受託加工サービスも展開。ヘイズメーターや表面粗さ測定による厳密な数値管理のもと、開発試作から量産まで、お客様の多様なニーズにお応えします。
関連ページ:「接着・塗装・溶射前処理」「研磨材噴射量制御技術」