CUSTOMER VOICE #16

株式会社ビック・ツール様

磨くブラストで医療用ドリルの歩留まり改善&時間半減!電解研磨後の曇りを鏡面仕上げ、微細バリ除去を自動化

防眩処理(マット仕上げ)用のブラスト装置も併用で生産効率向上

株式会社ビック・ツール様は、工業用ドリルとして高い切削性能が評価される「月光ドリル」をはじめ、各種ドリル研磨機を製造するメーカーです。月光ドリルの特徴である切削抵抗を抑える独自形状を活かした医療用ドリルも展開しており、スムーズな切削性能によって発熱を抑え、人体への負担を軽減できることから整形外科手術等で使用されています。

社名
株式会社ビック・ツール
本社
鳥取県西伯郡日吉津村日吉津38
WEBページ
http://www.bictool.com
事業概要
  • 工具製造
使用用途
  • 鏡面仕上げ
  • 微細バリ除去
  • 防眩処理

「お客様目線」をモットーにする同社は、現在50種類以上の医療用ドリルを展開しており、顧客ごとに異なる仕様や要望への柔軟な対応力も強みです。そんな同社に寄せられた、医療用ドリルに刻印された目盛りの視認性向上に関する要望をきっかけに、防眩処理(アンチグレア処理)を目的としたマット仕上げ(梨地処理)にブラスト処理を採用しました。当初はブラスト装置メーカー不二製作所の加工部門へ委託をしていましたが、需要拡大に伴い内製化を決めました。
そしてブラスト技術を活用する中で、防眩処理だけでなく医療用ドリル製造におけるさまざまな品質課題の改善にも活用できる可能性に着目します。それが、不二製作所の“磨くブラスト”「シリウスシリーズ」でした。

※マット仕上げ(梨地処理)による防眩処理(アンチグレア処理)について詳しくはコラム

今回取材にご協力いただいた
担当者様

  • 生産管理部 生産3課 課長

    武内様

  • 生産管理部 生産3課

    安孫子 恭弥様

  • 生産管理部 生産3課

    安孫子 真光様

“磨くブラスト”「シリウスシリーズ」で医療用ドリルの歩留まり改善と品質安定を実現

同社で製造するステンレス製の医療用ドリルは、防錆性を確保するために電解研磨を行っていますが、ドリル径や気温などの影響で仕上がりにばらつきが発生することがあります。武内様は「条件によっては3~4割くらいが白く曇った仕上がりになることもありました」と話し、それらは外観の品質基準を満たさない不適合品として廃棄処分していたといいます。
この問題を解決したのが、不二製作所の磨き専用ブラスト装置「シリウスシリーズ」です。一般的なブラスト処理は表面を“削る・粗す”用途で使用されるのに対し、本装置は特殊な弾性研磨材「シリウスZ メディア」を圧縮空気の力で噴射し、表面を滑るように加工することで”磨くブラスト”を実現しています。そのため、ドリルの切削性能は維持したまま、電解研磨によって形成された不動態皮膜も損なうことなく表面の曇りのみを除去できます。これにより不適合品の修正が可能になり、歩留まりが改善され廃棄ロスを大幅に削減しました。
さらに、同社の製造するステンレス製の医療用ドリルは材質の特性上、刃先形状の切削加工時にミクロンレベルの微細なバリ(糸バリ)が発生することがあります。従来はホイールブラシと拡大鏡を使い手作業で除去していましたが、作業が大変なだけでなく目視での確認が難しく取り逃したバリが検査工程で発見されることもありました。
本装置はエアーブラスト方式を採用しており、微細な研磨材を均一に到達させることができるため、複雑形状であるドリルの刃先でも確実なバリ除去が実現できます。作業を担当する安孫子様は「以前は差し戻しも多く大変でしたが、装置導入後は一度の加工で簡単にバリが除去でき、検査にもほとんど引っかからなくなりました」と話しており、医療用ドリルに求められる高い品質水準の維持にも貢献しています。

※シリウスZ メディアとは、低反発で衝突時に被加工物にそって変形する特性を持つ特殊高分子材料「SLIDE-RING MATERIAL®」に、磨き用研磨材を担持させた微小粒径のメディア。
・シリウスZ メディアは株式会社ASMとの共同開発
・SLIDE-RING MATERIAL®は株式会社ASMの登録商標

磨くブラスト「シリウスシリーズ」による医療用ドリル(SUS402 J2)の電解研磨後の曇り除去(鏡面仕上げ)と微細バリ取りの前後比較

左)磨き前(曇りのある状態)
右)磨き後(鏡面仕上げ)


シリウスZによる研磨後もドリルの防錆性は確保されている。

電解研磨後の曇り除去と微細バリ取りの自動化で生産効率が大幅に向上

同社は、自動運転型のブラスト装置を活用することで生産効率の向上も実現しています。手作業によるバリ取りは1本あたり1分以上の作業時間が必要でしたが、装置導入後は従来の半分以下まで短縮されました。本装置は、一度に最大20本のドリルを加工できるバッチ処理型のエアーブラスト装置です。加工プログラムを選択してドリルをセットした後は、スタートボタンを押すだけで加工が自動進行するため、作業者が装置に付きっきりになる必要がありません。そのため、自動加工中はレーザーマーキングや防眩処理など別工程の作業を進めることができ、現場全体の生産効率向上につながっています。
さらに、自動運転でも磨き品質を維持できることが大きな特長です。一般的な工具による研磨工程では、摩耗やツールチェンジのタイミングで加工性能が変化し、仕上がりに差が生じることがあります。これに対して本装置は、シリウスZ メディアの「自動再生機構」を搭載しており、加工中も常に研磨材を自動再生しているため連続運転でも安定した磨き品質を維持できます。
また、生産状況に応じて手動加工と自動加工を使い分けられることも、多品種少量生産が求められる同社の医療用ドリル製造において大きなメリットになっています。手動加工であっても安定した加工が可能で、作業者の経験や勘に左右されにくいことも特長です。

※シリウスZ メディアの自動再生機構(インライン再生)とは、装置内に搭載する機構で、稼働中でも随時メディア(研磨材)を再生することで、加工能力を一定に維持します。メディアの使用時間による仕上がりの差を抑制することができるだけでなく、作業者がメディアの使用時間管理や交換・再生する手間も不要です。

医療用ドリルの電解研磨後の曇り除去と微細バリ取りに使用する間欠回転型自動ブラスト装置
間欠回転型自動ブラスト装置
ニューマ・ブラスター シリウスシリーズ
加工中の動画

“お客様目線“を追求したものづくり

同社の手掛ける医療用ドリルは形状や仕様だけでなく、表面処理や外観品質に対する要求も様々です。武内様は、「10社あれば10社で仕様が違います。お客様の要望に合わせて対応していくことが大切です」と話します。
一方、不二製作所もまた、お客様ごとの課題に合わせてブラスト装置を設計・製作しており、今回導入いただいたシリウスシリーズも、医療用ドリルの品質要求や生産形態に合わせて仕様を検討し、専用設備として導入いただきました。
お客様ごとに異なる要望や課題に向き合い、より良い製品づくりを追求する姿勢は、ビック・ツール様と不二製作所に共通しています。品質向上と生産性向上の両立が求められる中、ブラスト技術はこれからもビック・ツール様の医療用ドリルの品質を支える重要な役割を担っていくことでしょう。

整形外科用月光ドリル
歯科インプラント用月光ドリル
航空機用月光ドリル

※掲載情報は取材当時(2026年5月)のものです。

この記事で活躍したニューマ・ブラスター

SRZ シリウスZ

自動化対応鏡面仕上げ装置

COLUM

エアーブラストによる防眩処理とは?医療機器や光学機器で採用

本編でご紹介した「磨くブラスト」とは別に、ビック・ツール様では医療用ドリルの防眩処理にもブラスト技術を活用しています。
医療用ドリルには、手術時の深さ確認のために目盛りやラインがレーザーマーキングされています。しかし、ステンレス製のドリルは鏡面仕上げの状態では光を強く反射するため、手術灯の下では目盛りが見えにくくなる場合があります。こうした反射による視認性の低下を防ぐために行われるのがサテン仕上げやマット仕上げなどとも呼ばれる「防眩処理(アンチグレア処理)」です。
防眩処理にはさまざまな方法があります。例えば黒染めや黒色アルマイトなどの表面処理は反射を抑える効果がありますが、材質や用途によって適用できる範囲が限られます。また、化学エッチングや薬品による梨地処理などもありますが、寸法変化や仕上がりの均一性に配慮が必要です。
その中で金属部品の防眩処理として広く活用されているのが、ブラストによるマット仕上げ(梨地処理)です。微細な研磨材を圧縮空気で噴射し、表面に均一な微細凹凸を形成することで光の反射を拡散させます。鏡面特有のギラつきを抑えられるため、レーザーマーキングされた文字や目盛りの視認性向上に効果を発揮します。
さらにブラスト処理は複雑形状にも対応しやすく、処理条件を調整することで求める外観に仕上げられることも特長です。医療機器に限らず、計測機器や光学機器、産業機械部品など、反射防止や視認性向上が求められるさまざまな製品で採用されています。

関連ページ:「梨地仕上げ

サンドブラスト(エアーブラスト)による、医療用ドリル(ステンレス)の防眩処理(マット仕上げ)前後比較
左:鏡面仕上げ 右:防眩処理(マット仕上げ)
防眩処理(マット仕上げ)の自動化が可能なサンドブラスト(エアーブラスト)装置加工室内
防眩処理(マット仕上げ)用自動ブラスト装置

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